砂利採取業を営む当社も、ご多分にもれず不況の波に飲み込まれ、所有していた土地を担保に町の金融会社から会社の運転資金を調達せざるを得なかった。毎月の支払いが200万円ものローンを組み、なんとか返済していたが、やはり肝心の砂利が売れず、行き詰まってしまった。そんなとき助けてくれたのが、不動産販売会社の社長で私の学生時代からの友人だった。
ともかく、金融会社へのローンの返済を軽くしたかったため、借入金全額に当る1億5千万円をその友人から借りて、土地に付けられていた抵当権をはずすことにした。その代償として、金融会社の抵当権がついていた当社所有の土地を友人の会社に譲渡担保として提供した。その土地の時価は、当時約5億円。交通量の多い国道に面していたことから、ロードサイドビジネスを展開するファミリーレストランやホームセンターなどから売ってくれ、という引き合いが何回かあったほど立地条件のよい土地だった。
友人も、その立地条件に目をつけたのだろう。譲渡担保を設定して2ヶ月が過ぎた頃、突然「あの土地を高く買い取りたい」と言ってきた。本業の砂利採取業がうまくいかず、運転資金に事欠いていたため、友人からのその申し出に対し二つ返事で答えた。
ただ、1億5千万円の借金の返済だけならば、土地を売って手元に残るお金は約3億5千万円。しかし、当時は、土地の譲渡に対する税金が非常に重くのしかかっていた。
そこで、ひらめいたのが当社の経営建て直しが終わるまで、そのまま譲渡担保として土地の利用を継続していることにすることだった。友人もその案に賛成してくれ、すぐに転売するのではなく、友人の不動産会社が展開する住宅展示場としてしばらく活用するとともに、土地の代金は向こう2年間で支払ってくれた。土地を譲渡担保として提供した形をとると、購入者に引き渡したわけではないから土地の譲渡益を計上しなくても済み、税金を払う必要がない。登記されているわけだから税務署に見つかるわけがないと高をくくっていた。だが、譲渡担保登記の設定から4年後、税務調査が入って、見事にその手口は暴かれてしまった。
税務署は土地の登記だけでなく、銀行口座への入金状況や土地の利用状態も調べていた。いま思い返すと、浅はかな考えだったと深く反省している。
2010年3月28日日曜日
Vol.28 『譲渡担保で土地売却益隠した』
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