2010年3月27日土曜日

Vol.27 『ラブホテルの日記で足がつき』

恋人たちの憩いの場所を作ろうと、私は数年前からラブホテルの経営を始めました。

今は、お客様の宿泊、滞在記録はすべてコンピュータに登録します。お客様がチェックインをすると同時に、事務所内に置いてあるパソコンに宿泊記録を入力するのです。

ある日、お客様がチェックインして数分後に、急用ができたということでチェックアウトされました。一見して大学生と分かるカップルで、2人は泊まれなくてとても寂しそうでした。気の毒に感じた私は、通常なら絶対しないのですが、このカップルに宿泊代を返金してあげたのです。2人は「ありがとうございます」と丁寧にあいさつをし、ホテルを後にしました。

この一件が、私を脱税に導いてしまったのです。このカップルもチェックインと同時にコンピュータに入力をしているため、普通にチェックアウトすると宿泊金額の1万2千円がマイナスとなってしまいます。そこで、一度コンピュータの宿泊欄に入力した「1(泊)」を、「0(泊)」に訂正してチェックアウトの手続きをしたのですが、この訂正を利用することで脱税ができると考えたのです。

つまり、現金で宿泊料金を支払ったお客様のうちの数組について、チェックイン後に「0(泊)」に訂正し、その金額を隠したのです。だいたい1日3室くらいを「0」泊に訂正していたので、月に100万円近くの売上げを少なく見せることができました。私が経営するホテルは繁華街のど真ん中にあり、平日・休日を問わずほぼ満室状態でしたが、それを隠すために、わざわざ稼動実績を9割程度としたニセ帳簿も作ったのです。

しかし、これも長くは続きませんでした。繁華街のど真ん中という場所柄、税務調査のメスが入りやすいことは予想していたため、それなりに帳簿はしっかりと作り変えていたつもりでした。ですが、思わぬところでバレてしまったのです。

それは、客室に置いてある日記帳。帳簿上、空室となっていたはずの部屋の日記帳に、その日の日付で日記が書かれてあったのです。そこから、コンピュータを操作して稼動をごまかしていることが分かってしまいました。

その日記には、「先日はありがとうございました。急きょ帰らなくてはならない用事ができてしまったのです。直接言うのは少し恥ずかしいので、この日記帳に『ありがとう』と書きました」と書いてあったのです。その日記を読み、自分のしたことが情けなくなりました。

0 件のコメント: