2010年3月18日木曜日

Vol.18 『刑務所で学んだのに…』

もう二度と悪いことはしないと決心したのに…。私は、商業高校卒業後、簿記の能力を生かし、東京の中堅企業の経理として約8年間働いていた。

ところが、風俗にはまり、魔が差して会社の金を横領してしまった。会社はクビ、その当時結婚を約束していた女性にもフラれ、挙句の果てには、横領金が返済できずに会社側が告訴し、有罪判決、そして刑務所へと転落の人生へ。

そこでは、もう二度とこんなところには入るまいと誓った。出所後、しばらくたって、刑務所の同房者と道端でバッタリ。ムショ時代では、風俗の話をして気を紛らわせていた仲だった。そんなAが私に、「風俗店を開くから一緒にせえへんか」と声をかけてくれた。出所後、アルバイトで生計を立てていた私にとってはありがたい一言だった。

そして、二人でイメクラを経営した。折しも、コスプレブームから店は連日大繁盛。2号店を出店する勢いに。

そんなとき、Aから「この商売ぼろいな。でも、税金がこんなぎょうさんとられて、ホンマ腹立つわ。税務署もしょせん役所。縦割りやから1号店とは管轄が違う場所に2号店を置けば、売上除外で浮かせたカネを2号店に回しても大丈夫や」とそそのかされ、管轄地域の異なる場所に2号店を出店した。

案の定、その後はなんの問題もなく売上げは伸び続けた。一方で、両店舗の売上金の一部を除外。その金は簿外の普通預金に入れ、事業拡大資金として、私個人からの借入金に見せかけ、まだまだテコ入れが必要な2号店に戻し入れていた。そして、申告は赤字に―。

そんなある日、「国税庁が広域化に対応」というニュースを耳にした。「広域化」というコトバがなんとなく気になりながら、数カ月が経過した。「まさか自分たちには関係あるまい」とたかをくくっていたある日、いつものようにお客さんと話をしていたら、突然、1号店を管轄している税務署の調査官がきた。しかも、2号店の情報を持って。

「やっぱりバレたか…」。1号店の売上げが、ある時期を境に減少していることや、2号店への軍資金の出所などがマークされ、調査対象に選定されたようだ。税務署は入念な準備をしており、私や友人、店に関する多くの資料を持っている様子。私はスグに白旗を揚げ、洗いざらい白状した。後で聞いた話では、国税庁が広域調査に乗り出したちょうどその時期、税務署では風俗店への調査を強化していたらしい。

その後、Aとはけんか別れ。店もブームが過ぎ、今は本当の借金だけが残っている。

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