2010年3月2日火曜日

Vol.2 『税制改正を逆恨みした結果…』

ほそぼそと自動車修理販売会社を経営する私に転機が訪れたのは、もう10年ほど前のこと。父親の死亡で高額な遺産が転がり込んできた。東京都内でマンションの賃貸経営をしていた父親が、脳卒中で突如倒れ、そのまま帰らぬ人となり、残されたマンションを私が相続したわけだ。

マンションの時価は約2億2千万円。負債がなかったため、そっくり相続税の課税対象になってしまった。納税資金をなんとか工面して納めたが、相続してからは毎月200万円ほどの家賃収入が入るようになり、抱えていた借金の返済をしても資金的に余裕ができるようになった。

ただ、その後、しゃくなことが起きた。相続税を大幅に軽減する税制改正が行われたのだ。税理士に再度新しい税制で相続税を計算してもらったところ、数百万円少なくて済む勘定になった。新制度と旧制度のタイムラグは分かっているつもりだが、父親の死亡から大した時間がたっていないのに、納める相続税が数百万円も違ったことにどうしようもない憤りを感じた。以来、「税金は水物。正直者がバカを見る」と私は自分に言い聞かせるようになった。それがあとになって大きな間違いを引き起こすことになる。

世間のIT革命の波に乗り、私もインターネットによる中古車販売の仲介業に取り組んだ。長年の自動車に関する知識はそこで開花した。キズや事故歴、中古車の風評など高度な鑑定眼が消費者ニーズを捉え、売買成立件数があれよあれよと伸びていった。おのずと仲介手数料も増え、多額な収入を得るようになった。そこでやらなければよかったのが、仲介手数料を自分の個人名義の口座に振込ませるように仕組み、会社の売上から除いたことだ。税金に対する過去の嫌な思い出から、ヘタな工作をしてしまった。

税務署がそんな私を見逃すはずがない。ホームページのアクセス件数から顧客を割り出し、かなりの稼ぎがあると判断した調査官が、いきなり会社にやってきた。アッという間に個人口座がバレて、法人税だけでなく個人の給与課税までされてしまい、儲けをそっくり税金として納めるハメになってしまった。いくら税制が憎くても、脱税することはまた別の問題だと思い知らされた。

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