2010年4月4日日曜日

Vol.34 『ネイルアートに魅せられて…』

私がネイルアート・ビジネスに関心を持つようになったのは10年ほど前。アメリカ旅行中に、知人に誘われて初めてネイルサロンに行ったその日に、「日本でも一般向けビジネスとしてやっていける」とひらめいたのが始まりだった。

爪の健康についてアドバイスしながら色とりどりのマニキュアやツケ爪、アクセサリーを使ったメイクアップ・サービスを提供するネイルサロンは、今でこそ日本でもOLや学生が気軽に利用しているが、当時はまだ特殊な存在だった。

そんななか、ネイルアートの魅力に取り付かれた私は、日本の仕事をやめて本場アメリカのネイルサロンにヘルパーとして入り込み、コツコツと下積みを重ねながら「普通のOLが足を運べるネイルサロン」の実現を目指した。努力の甲斐あって、5年程前にようやく小さなネイルサロンをオープン。後発組ながら、爪の健康管理を前面に押し出した丁寧な対応が客にウケ、着実にリピーターを増やしていった。ビジネスが軌道に乗ってくると、オリジナルブランドのネイルカラーを発売したり、ネイルアートに関するセミナーを開催するなど、少しずつ職域を拡大。ファッション雑誌にも取り上げられ、面白いぐらいに客が入るようになった。普通のOLや学生でにぎわうサロンを目指しながら、下積み時代を思い出して感無量になったあの時の心境を今でも昨日のことのように覚えている。

しかし、「馴れ」とは怖いものだ。儲かれば儲かるほど初心を忘れ、売り上げのことばかり考えるようになった。売上目標を設定し、ピリピリしながら仕事をしているうちに、税金までが惜しくなった。はじめは来店客の間引きによる売上除外から手を付けた。そしてネイルカラーやアクセサリー類などの仕入をごまかすようになり、そのうち、ネイルケア商品の販売やセミナーなどの売上げをごっそり落とすようになった。

ブームとなっているネイルサロンに税務署の目が向いていないはずはなかった。ある日、膨大なデータを手に税務署がやってきた。同業他社と比較して申告内容が不自然なのだという。帳簿類をアレコレ調べられ、交通費伝票から売上げを申告していないセミナーの地方遠征がバレてしまった。これが糸口となり、数々のごまかしが白日の下に――。

加算税などのペナルティは相当痛いが、それ以上に、私の腕を見込んで何度もお店に足を運んでくれたお客様や、信頼してついてきてくれたスタッフを裏切ってしまったことが辛い。貧乏でも、夢を持って頑張っていたあの頃の生活のほうが、ずっと充実していたといまになって実感する。

0 件のコメント: